NDB─初めて過るその想い

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私の中で自我の「芽」が芽生え始めたきっかけは、篠槙さんが莉実さんとの【闇のゲーム】に敗北した瞬間を目の当たりにした時でした。 それからの私は自身でも理解不能な行動や思考をするようになり、私は自我の発露に気が付いたのです。 しかしゴルグが私に植え付けた彼自身の意志がとても根強く、芽生えたばかりの弱い自我は時間と共に覆い隠されていってしまいました。 篠槙さんが戻ってきてくれたことで再び自我が優位になれはしたのですが、やはり時間が経過していくにつれてゴルグの意志が私の自我を弱らせてしまいました。 そんな時、ハラマさんが私に話しかけてくれました。 私が大きなショックを受けるであろう重要な情報を見つけ出した、と。 これがなければ、私はきっとゴルグの操り人形としての私に完全に戻ってしまっていたでしょう。 ……ハラマさんの見つけた秘密の内容次第では、この時の私は彼を殺すつもりでした。 ですが幸運にもハラマさんは私の裏切りに関する秘密を持ってはいませんでした。 彼が見つけたものは、ゴルグが私にすら隠していた情報だったのです。 その情報こそ、ゴルグが自我カテクシス欠乏症の可能性が高かった私を引き抜く為に、両親を殺して、強引に孤児に仕立て上げたことでした。 更にハラマさんは判明した私の本名から両親を見つけ出してくれていて、両親の名前と写真が入った資料を渡してくれました。 それを見た瞬間、私は強烈な頭痛に襲われて気を失ってしまいました。 そしてハザードによって封印されていた記憶が、夢として想起されたのです。 ハザードを使用された時に私がまた幼く、脳の成長段階が初期だったことと、ハザード自体がまだ完璧ではなかったこと。 それらの要因が上手く重なり合い、私の中の記憶の封印は解かれることが出来たのでしょう。 ゴルグが私にしたことを思い出した私は、ついに自我を完全に取り戻すことができました。 彼への怒り、そして恨みによって。 その全てを篠槙さんに話し終えた私は、ゆっくりと顔を上げました。 私の人生を滅茶苦茶にしたゴルグに対する復讐心を私が持つように、篠槙さんも私に復讐心を抱いているでしょう。 仮に今、彼がデュエルデバイスを構えていても不思議ではありませんし、私は覚悟を既にしています。 私もまた、篠槙さんの人生を狂わせてしまったのですから。
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