NDB─初めて過るその想い

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篠槙さんは顔を海の方へと向け、表情が窺えなくなりました。 右手で前髪を持ち上げるような動作をしながら、彼は私に告げてきたのです。 「──これが惚れた弱みってやつなんだろうな。やっぱり俺はエリーナが好きなんだ」 「っ!!」 好きと言ってくださったのはこれで二回目。 ですがその意味は大きく変わります。 篠槙さんは……今の篠槙さんは、 これまでの『エリーナ=ラインソール』ではなく、『エリーナ=シャリテ』を好きだと言って下さったんです……っ! ものの一瞬で、私の視界はぼやけてしまいました。 それでも目の前にいる人影に飛びつくようにして抱き着きます。 「篠槙ざん……っ、しのまぎさあああん!!」 嬉しさと喜びで、胸の中は一杯でした。 ただ、服を通して伝わってくる篠槙さんの体温がいとおしくて仕方がないのです。 「本当に、いいんでずがっ!? わだじみたいな、おんなでも本当に……っ」 最後の確認の言葉を、私は篠槙さんに問いかけました。 答えはもう分かりきっています。 それでも彼の口から直接聞きたかったのです。 「ああ、エリーナがいいんだ」 その言葉を聞けたとき──。 私は救われたと思いました。 エリーナ=シャリテとしての自我を獲得してから今まで、私はずっと罪の意識に苛まれ続けてきました。 彼の胸に埋めていた顔を上げ、篠槙さんの表情をしっかりと捉えた上で、私も思いを改めて伝えました。 「わたしも──大好きですっ!」 それを聞いてくれた篠槙さんは、私の背中に手を回し抱き締め返してくれたんです。
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