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思いを伝え終えてから少し経ち、私たちは縁石の上に横並びで座り、海を眺めていました。
篠槙さんの右手と私の左手は指を絡めて重ね合わせています。
「篠槙さん」
心地よい波音を聞き流しながら、私は彼の名を呼びました。
彼はその声に反応し、私の方へ顔を動かしてくれました。
「ん?」
「一つ、我が侭を言っても良いですか」
私は優しい眼差しを向けている篠槙さんに問いかけました。
彼はやはり当然、ゆっくりと頷いてくれました。
「ああ。エリーナの我が侭だったら一つじゃなくでも俺は平気だ」
彼のその優しさがとても身に沁みます。
この優しさにずっと甘えていたい。
そんな衝動に駆られてしまいますが──それはダメです。
私はさらなる決意をしなければならないのです。
「私、アジトに戻ったら皆さんにもお話ししようと思うんです」
「……そうか」
篠槙さんはただただそれを肯定しました。
恐らくこの人は、私が語ろうとする続きを理解しているのでしょう。
でもそれでも、私は説明を続けます。
「篠槙さんは私を受け入れてくださいました。ですが皆さんが同じとは限りません」
そう。
私の罪は本来、こんな簡単に許されることではないのです。
アジトの皆さんもとても優しいですが……全員が同じ結論を出すとは到底思えないのです。
特に、共に同じ目的を志してサブスタンティアティを抜けたと思っているユリアースさんとノルさんは。
「…………もしかしたら、篠槙さんとこうして一緒にいられるのは、これが最後かもしれません」
「……」
最悪の場合、私はその場で処刑されるかもしれません。
それでなくとも、危険人物として監禁されるでしょう。
そしてサブスタンティアティとの戦いに勝利しても、私は首謀者の側近という超重要参考人として政府に捕縛される。
篠槙さんもそれを理解しているからか、黙ったまま眉を潜めていました。
──言うなら今しかありません……っ!
「ですから、その……」
両膝の上で拳を握りしめ、頬が熱くなるのを感じながら、私は最後の勇気を振り絞りました。
「わっ、私を……だっ、抱いてくれませんか!?」
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