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私のお願いを聞いた篠槙さんはやはりというか、一瞬で耳まで真っ赤に染まって仰け反る様にして驚いていました。
「なっ!!?」
当然の反応だと思います。
仮に私も同じことを言われたら、同じように真っ赤になったと思います。
「だ、駄目ですか?」
一抹の不安を感じながら篠槙さんに問いかけます。
すると彼は仰け反っていた姿勢を戻し、頬を指で掻きながら返事をしてくれました。
「い、いや……そういうわけじゃないが……俺を気遣ってくれてるんなら、無理しなくてもいいんだぞ」
「……いえ、違うんです。私は篠槙さんに全てを受け入れて欲しいんです」
両想いであることを確認した直後にこういったことを申し出るのは、本来の交際としては相応しくないのでしょう。
だから篠槙さんも躊躇ったんです。
ですから私は今一度細かく自らの願いを伝えます。
「もしこの機会を逃して、もう篠槙さんと一緒に居れるチャンスが二度となかったとすれば、私は一生後悔するでしょう。私はそれが嫌なんです」
それを聞いた篠槙さんは納得してくれたようで、ゆっくりと一回頷いた後に、重ねていた手を持ち上げて握り締めてくれました。
「お前がそう考えているのであれば、俺としても……したい」
「篠槙さん……っ」
篠槙さんが私の身体を求めてくれている。
その事実はかなりの恥ずかしさを覚えつつも、女としての幸せも強く実感しました。
「ただし、ここは人目につくから移動しような」
「……はい!」
そして私たちは縁石から降り、手を繋いだまま砂浜を歩き始めるのでした。
篠槙さんが候補として見つけて下さった、元々海の家であったであろう木造の家屋を目指して。
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