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私は急ぎ、新アジトの方へと戻りました。
お義父さんによって訓練させられたとはいえ、先天的に運動能力の低い私は道中何度も息を切らして足を止めかけましたが、逸る気持ちが背中を後押ししてくれました。
アジトの近くまで戻ると、ユリアースさんが外に出ているのを発見しました。
私のことを視認すると、慌てた形相で走り寄ってきました。
「エリーナ! 無事だったか……。突然、いなくなるからみんな心配したんだぞ」
「ハア……ハア……ごめん、なさい……」
そもそもレジスタンスの方々を置き去りにし、『組織』へと戻る予定だったのですが、
ユリアースさんの怒りが込められた声を聞くと、私の口は自然と謝罪の言葉を紡いでいました。
私は荒い息を整える為に何度か大きく息を吸い込み、ある程度解決したところでユリアースさんに頭の中で一杯になっている想いをぶつけました。
「篠槙さんが生きているかもしれないんです!」
「!? 突然どうした──って、お前まさかあのビルに戻っていたのか!?」
今の一言で私の行動を理解したユリアースさんも声を荒げました。
「なっ!? あそこは今は『組織』に陣取られたといっていい場所だぞ! どうしてそんな危険なことを……」
声を荒げるユリアースさんでしたが、その理由に気付いたのでしょう。言葉が急に止まりました。
私の方も少し冷静さが戻ったので、一つ頷いてから口を開きました。
「はい……。あの場所に放置するように置いていってしまったのが気がかりで……」
本当は自分でもあの場所に戻っていた理由がハッキリとは分かっていません。
感情もなく、自らの意思も皆無に等しい。
それが私、エリーナ=ラインソールなのだと思っていたのに、誰に支持されることなく私は勝手に足を動かしていました。
一体何故なのか。まだ私は困惑していました。
しかしそれは表に出さず、今まで通りの「レジスタンスでのエリーナ=ラインソール」として振る舞うことに切り替えました。
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