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外で話し続けるのは危険というのと、他の方にも無事を知らせないとという理由で私とユリアースさんは一度話を止め、ビル群の路地に入りアジトへと戻りました。
中では歓菜さんと成音さんがすぐに迎えてくれました。
ノルさんはバイクを使って私の捜索に出ていたので、戻るのは少し後になるとユリアースさんが教えてくれました。
瑞稀さんはここに来た時からずっと奥の部屋でうずくまっているので、居間にいないのは仕方がないでしょう。
その後、ユリアースさんの連絡を受けて戻ってきたノルさんを交えてから、私は話を再開させました。
ちなみに彼にも謝罪をしたのですが、「無事だったから良かったよ」と笑顔で言ってくれただけでした。
「篠槙さんを寝かせた部屋に入ったのですが、そこに篠槙さんの姿はなかったんです。だから、まだ生きているんです!」
少し熱の入った私の説明を聞いた皆さんは、思ったより薄い反応といった感じでした。
どうして、みんな喜んだりしないのでしょうか。
「エリーナ。水を差すような言い方になるが、篠槙羚が生存している可能性は皆無といっていい。『闇のゲーム』の敗北による死の呪いを乗り越えた人間は誰一人としていない」
「でっ、でも……!」
ユリアースさんの冷静かつ正論といえる返しに、私は必死に食らい付こうとしますが、上手く言葉が紡げません。
「……可哀想だけど、ユリアの言う通りだよ。彼の遺体がないのは、『組織』が回収したからというのが現実だと考えるべきだ」
「そんな……」
ノルさんも否定的な言葉を口にし、今まで気持ちが高ぶっていた反動なのか、背中が椅子の背もたれに張り付いたかのように動かなくなってしまう。
よくよく考えてみれば、『闇のゲーム』の呪いを受けてしまった篠槙さんが生きているハズもなく、あの場所にいなかったのは他人に運ばれたから──なんていう可能性はすぐに出るものでした。
それを今の今まで気付けなかったなんて、私は相当気持ちが高ぶり続けていたようです。
……どうして、篠槙さんのこととなるとこんなに……。
ただの、『警戒対象』だったはずなのに。
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