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「さて、それじゃあまずは──」
そして、我が家のように慣れた動きで床の上の座布団に正座したツバメは、持参したバッグの中から何かを取り出そうとした、その時だった。
再び部屋の中をインターホンが鳴り響かせた。
「ん、また誰か来たのか?」
ツバメが朱火辺りを連れてきたのかと思い視線を向けるが、どうやら彼女もこの来訪には目を丸くしていた。
先程と同様、無視するわけにもいかないので、星河はまた玄関の方へと歩いた。
しかし今度はすぐにドアを開けるわけではなく、ドア越しで用件を窺う。
「どちら様ですか?」
「宅急便ッス! 天津星河さん宛てにお荷物ッス」
どうやら業者だったようだ。
それなら業務中の人間を無用に待たせてはいけないと思い、星河は開錠してドアを開いた。
「どうもッス。これにサインを宜しくッス」
そこそこ大きな段ボールを抱えている宅配便の青年は、その上に乗せている端末を顎で示す。
ノマディックメトロでは伝票は電子化されており、端末の液晶に指で名前を書けば完了となっている。
無論、星河も当たり前のようにそこに指で名前を書いた後、段ボールを受け取る。
ズシリとした重量があり、さして筋肉質ではない星河は少し意識的に踏んばらないといけなかった。
「あっざーしたー」
宅配便は業務を終えると丁寧にドアを閉めて立ち去っていった。
星河は何とか片手で鍵を閉めると、ツバメの待つ自室へと戻った。
「アンタ宛てに荷物なんて珍しーわね。マリアさんから?」
彼女の前で段ボールを置いた星河は、そういえばまだ送り主の確認をしていなかったことに気付く。
重量がある荷物故に、そこはきちんとしておくべきだったと少し反省しつつ、彼はツバメと共に送り主の確認をした。
ちなみに先程の端末は当然宅配便の青年に回収されたが、そこからレシートが印字されているので、それで確認が可能なのである。
(……っ!)
そこに示されていた名義を見て、星河は一瞬言葉を失った。
「──柿葉、巴さんだって!?」
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