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柿葉巴──。
かつて愛した「彼」に復讐する為に暗躍を続けていた女性。
彼女は彼の後を追い、サブスタンシャルコーポレーションとの戦いを終えた後に自殺するつもりだった。
そこを星河が阻止して説得することで、巴は生き続けることを心に決めたのだ。
だがその後、彼女は星河たちの前から姿を消した。
始めは再び命を絶とうとしているのではないかと危惧したが、それは杞憂であることが後に分かった。
星河やツバメたちからは消息を絶った巴だが、山倉真由とは連絡を取り続けていることが判明したからだ。
真由にとっても、巴にとってもお互いが恩人同士という関係は、やはり特別なようだ。
故に星河はそれ以上、彼女を追うことはやめたのだ。
(……だったんだけど、あっちからこうして接触を図ってくるとはね)
ただ荷物が一方的に来ただけのこの状況は、接触とまでは言えないかもしれない。
けれどもし、彼女が自分たちから離れた理由が、自らの陰謀に巻き込んだことへの自責なのだとすれば、
この箱に入っているモノは、そんな彼女の決意を上回る重要な何かが詰められているのかもしれない、と星河は考えた。
「で、どうするのこれ?」
思考を巡らせていた星河は、ツバメの声で意識を現実に引き戻された。
とはいえ、彼の解答は既に決まっている。
「開けてみよう」
星河はそう言いつつ、机の上の筆立ての中にあるハサミを手に取った。
箱の封を閉じているテープをハサミの刃を滑らせることで割いていく。
そして蓋が開けられた箱の中身を、星河とツバメが同時に覗き見る。
そこには、今のご時世には似合わない無骨で大きな機械が入っていた。
「……ナニコレ?」
「さあ」
当然ながら、その答えを知る人間はこの場には居ない。
となれば取り出して調べる他に、その正体を知る方法は無い。
そう結論付け、十キロはあるであろう機械を力を込めて持ち上げた星河は、机の上にそれを置く。
すると、ツバメが箱の底に手紙のようなものが敷かれていたことに気付いた。
「あ、これ……巴さんからよ」
「本当か。読んでもらっていいか?」
二つ折りされていた手紙を開いたツバメに、星河がお願いをする。
ツバメはそれに頷いた後、その内容を音読し始めた。
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