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「よし、更に《星鳥リリアナ》を召喚し、スピードアタッカーになった《リゲル・ワイバーン》で攻撃だ」
「うわあ……これで対戦相手は0マナになっちゃったわ。あんたは6マナもあるのに、エグすぎ……」
「《リリアナ》引けちゃったからね」
星河はそのままターンを終了させた。
ここまでくれば勝ち確定と言っても過言ではない、とツバメはむしろ対戦相手を哀れんでいた。
だが星河はツバメの言葉に苦笑しつつも、油断はしていなかった。
既存カードのみであれば、これをひっくり返すのは難しい。
しかし相手はオリジナルカードを使用してくる。
そしてそれがどんな方向性なのかも、まだ分からないのだ。
(どっちにせよ、このターンでわかりそうだな)
星河は眉間のシワを増やしながら、画面内の相手バトルゾーンを眺め続けた。
………………。
「……あの状況を、一気に押し返しちゃうなんて、信じられないわ」
対戦相手のターンが終了し、呆気にとられているツバメの呟きを、星河も驚いた表情のまま聞いていた。
確かにまだ油断できないとは考えていた。
でもそれは精々、《リゲル・ワイバーン》が除去されつつ、マナを少し回復される程度だと思ったのだ。
しかしターンが明けてみれば、クリーチャーが五体も並び、マナの回復どころか毎ターン二枚のカードのコスト踏み倒しを可能とする《Q.E.D.》が立たされた。
オマケに《リゲル・ワイバーン》が殴り倒されただけでなく、次に星河が召喚するコストの負担が増やされてしまっている為に、強力なカードがいる7コストに届かなくなってしまった。
次のターンに一気に攻められるであろう状態で、この負荷は命取りとも言える。
「……ちょっと星河、どうすんの?」
「……」
ツバメの問いかけに、星河は答えなかった。
代わりに彼は、画面に人差し指を近付ける。
ただし、それは手札が表示されているエリアではなく、
『通話申請』と書かれたボタンの部分だ。
「ちょ、あんた何考えてんのっ!? 相手はサブスタンの残党なんでしょ!!?」
「……きっと違う」
ツバメの必死の制止を星河は否定する。
だが彼女はその一言だけでは当然納得しない。
「なんでそんなこと言えるのよ」
「うーん……強いて言えば、」
星河は顎に指を添え、なにを語るべきか思案する。
そして思い付いた答えはこうだった。
「同じ5マナ・パワー4000をエースとして使うもの同士のシンパシー、かな?」
「は……?」
意味不明な返答に一瞬呆れ声を出すツバメ。
再び噛み付こうとした時、機械の画面から通話申請が通り、それが始まった合図である音声が鳴った。
すかさず星河は機械に向かって喋りかけ始めた。
「こちらの通話申請を受けて下さって感謝します。俺と同じオリジナルデッキの使い手である貴方と是非直接お話しがしたく、申請させてもらいました」
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