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タブレットから聞こえてきた丁寧な口調の声は、自分とほぼ同じ年代の青年だと察した。
そして敵である可能性も捨てきれない今は、相手の敬語には合わせずにタメ口のままで行こうと隆侍は決めた。
「単刀直入に聞かせてもらおう。あんたは何者なんだ。どうしてオリジナルのデッキを持っている」
その言葉を聞いた星河は少し間を置いた後に口を開いた。
『どうやら、お互いに同じ疑問を抱いているようですね』
同じ疑問、という言葉に隆侍は眉をひそめた。
「どういうことだ?」
『こちら側としても、貴方がオリジナルのデッキを持っていることが不思議だと言うことです』
その説明を聞き、隆侍も予感を感じ取った。
この声の主は、ヒミコ側の存在では無いのではないか、と。
『──ですが、一つ確実なこともわかりました。どうやら、こちらが想定していた最悪の事態では無かったようです』
『え、ちょっとどういうことよ!?』
星河の声に真っ先に反応を示したのは横にいたツバメだった。
当然、その存在を知らなかった隆侍と慧は突然聞こえてきた女性の声に驚いたが。
そんな彼女に星河は端的に理由を教える。
『もし残党だったなら、俺のデッキのことを知らないわけないだろ?』
『……ああ、それもそうね』
サブスタンティアティの残党であるならば、ハラマが遺したイリーガル・メディアの存在を知らぬ筈がない。
だが隆侍はイリーガル・メディアとは一言も言わずに疑問を呈してきたので、残党である可能性は低いと判断したのだ。
ツバメもそれで理解したようだ。
……仮に残党であるなら、《ルナ・ブルーダイナソー》などという実用性が低いカードを投入している筈もないしな、と星河は心の中で密かに思ってもいたが。
とここで、慧が相手側に連れがいるならば俺も、といった具合にタブレットに向けて話しかけ始めた。
「こちらも口を挟ませてもらうが、そっちの二人もこっちのプレイヤーのデッキは知らないんだな?」
『ええ。オリジ──ルのサイバー・ムーンなんて初め──見ました』
相手側にも二人目がいたことに大きくは驚かなかった星河だったが、彼の言葉はノイズによって一部が隠されてしまった。
幸い、意味がわかる程度には届いたが。
彼の肯定を聞いた隆侍は、同様に相手が敵では無い可能性を考え始めた。
(言われてみれば……もし通話の相手がヒミコの仲間なら、俺のデッキを知らないわけがない、か)
スピーカーから聞こえてくるノイズは弱まった。
だがさっきまでとは違い、微弱なノイズが残っている以上、これまでのように楽観視はできないようだ。
『どうやらお互いの誤解も解けたようですし……どうでしょう。このままデュエマを再開しませんか? この通信、そう長くは持たないかもしれませんし、貴方のデッキとは是非決着をつけたいんです』
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