イルレコ─Encounter with [astronaut]

29/39

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
(普通、ならな……) もう負けを覚悟しても良いような状況。 しかし隆侍は考え続けた。 (けど俺のデッキは、カードとの絆で生まれたフューチャー・アームズ! 可能性はまだほんの一筋だけ残ってる!) 《ルナ・ブルーダイナソー》から生まれたこのデッキ。 隆侍はその奇跡を信じ続ける他無いのだ。 『ま、シールド・トリガーも使えない状態で確殺圏内なんだから、こっちの勝ちね。見事な逆転勝利じゃない!』 『……どうかな』 ツバメの陽気な革新のセリフに星河は容易く同意はしなかった。 確かに一般的にはほぼ勝利したといえなくもない状況だ。 だが星河は自らがオリジナルデッキを扱うからこそ、その「底意地の悪さ」を知っているのだ。 かつて、自らの前に立ちふさがり、そして憧れることとなったあの黒スーツの青年のように──。 「まだだ」 《メガ・ポラリス》の熱線により墓地へと送られたカードが発光したのに気付いた隆侍が呟いた。 「墓地に置かれた《ルナ・アドミラルスター》の能力により、俺は1枚ドローする」 墓地に置かれるのであれば、直前のゾーンには囚われない能力。 しかしそれは一見すると防御とは無縁の行動だった。 『1枚ドロー……? それでシノビか革命0トリガーを引き当てるってこと?』 (隆侍のデッキにそれらの防御カードは入っていない……──そうか!) ツバメがドローによって得られる防御手段の候補を挙げるが、隆侍のデッキ事情をある程度把握している慧は心の中で否定した。 だが、それとは別の可能性には辿り着くことが出来た。 そしてそれは星河もであった。 『ルナブルさんのバトルゾーンには《ルナ・グレーホース》がいる。あのカードはサイバー・ムーンの手札増強効果に反応して、バウンスが行える。つまり……』 『あのドローカードが7コスト以上なら、トドメを防げるってことね!?』 星河のヒントを聞いたことで、答えに気づけたツバメが声を上げた。 無論、隆侍はシールド焼却など想定していたワケではないので、全ては偶然なのだが、 直前のターンに《グレーホース》を出しておいたことで、希望の糸はまだ切れなかったのだ。 「行くぞ!」 隆侍は意を決してから、画面内のデッキをタップした。 そして手札へと移動したそのカードを確認する。 「……」 『『……』』 隆侍の言葉をじっと待つ三人。 静寂が電子を隔てた彼らを包み込んだが、ようやく彼が口を開いた。 「《ルナ・ヘドウィック》、コスト7だ」 その結果発表と同時に、星河のバトルゾーンにあった《メガ・ポラリス》が水流で飛ばされるエフェクトにより消失させられた。 『……ターン終了です』 《メガ・ポラリス》の追撃を見事封じられた星河はターンを明け渡す。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加