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(普通、ならな……)
もう負けを覚悟しても良いような状況。
しかし隆侍は考え続けた。
(けど俺のデッキは、カードとの絆で生まれたフューチャー・アームズ! 可能性はまだほんの一筋だけ残ってる!)
《ルナ・ブルーダイナソー》から生まれたこのデッキ。
隆侍はその奇跡を信じ続ける他無いのだ。
『ま、シールド・トリガーも使えない状態で確殺圏内なんだから、こっちの勝ちね。見事な逆転勝利じゃない!』
『……どうかな』
ツバメの陽気な革新のセリフに星河は容易く同意はしなかった。
確かに一般的にはほぼ勝利したといえなくもない状況だ。
だが星河は自らがオリジナルデッキを扱うからこそ、その「底意地の悪さ」を知っているのだ。
かつて、自らの前に立ちふさがり、そして憧れることとなったあの黒スーツの青年のように──。
「まだだ」
《メガ・ポラリス》の熱線により墓地へと送られたカードが発光したのに気付いた隆侍が呟いた。
「墓地に置かれた《ルナ・アドミラルスター》の能力により、俺は1枚ドローする」
墓地に置かれるのであれば、直前のゾーンには囚われない能力。
しかしそれは一見すると防御とは無縁の行動だった。
『1枚ドロー……? それでシノビか革命0トリガーを引き当てるってこと?』
(隆侍のデッキにそれらの防御カードは入っていない……──そうか!)
ツバメがドローによって得られる防御手段の候補を挙げるが、隆侍のデッキ事情をある程度把握している慧は心の中で否定した。
だが、それとは別の可能性には辿り着くことが出来た。
そしてそれは星河もであった。
『ルナブルさんのバトルゾーンには《ルナ・グレーホース》がいる。あのカードはサイバー・ムーンの手札増強効果に反応して、バウンスが行える。つまり……』
『あのドローカードが7コスト以上なら、トドメを防げるってことね!?』
星河のヒントを聞いたことで、答えに気づけたツバメが声を上げた。
無論、隆侍はシールド焼却など想定していたワケではないので、全ては偶然なのだが、
直前のターンに《グレーホース》を出しておいたことで、希望の糸はまだ切れなかったのだ。
「行くぞ!」
隆侍は意を決してから、画面内のデッキをタップした。
そして手札へと移動したそのカードを確認する。
「……」
『『……』』
隆侍の言葉をじっと待つ三人。
静寂が電子を隔てた彼らを包み込んだが、ようやく彼が口を開いた。
「《ルナ・ヘドウィック》、コスト7だ」
その結果発表と同時に、星河のバトルゾーンにあった《メガ・ポラリス》が水流で飛ばされるエフェクトにより消失させられた。
『……ターン終了です』
《メガ・ポラリス》の追撃を見事封じられた星河はターンを明け渡す。
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