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私は再び音を立てぬようにアジトへ戻り、就寝の態勢に戻りました。
そして意識が落ちる前に、この二日で起きた自身の異常について細かに分析することにしました。
(起因は改めて探るまでもありません。篠槙さんが莉実さんとの『闇のゲーム』に敗北し、逝去してしまう瞬間を目の当たりにし、大泣きしてしまったから)
それ以降、私の中はおかしくなってしまった。
今までの様に冷静に、冷酷に思考を張り巡らすことが出来なくなりました。
そしてその根本的な原因。
私は──それが何なのか、分かり始めていました。
あり得ないと思っていたから、目を逸らしていたその可能性を理解しかけているのです。
(……私は……私の中に、自我が芽生え始めているんですね)
自我カテクシス欠乏症。
私は自らの意志というものを持たない。持つことができない身体障害を負っていました。
自我を持たない以上、自らを突き動かす物は他者に依存する。
ゴルグ=ラインソールはそれを利用したのです。
故に、私はレジスタンスの方々を安易に裏切り続けることが出来た。
それがあの方の命令──与えられた意志だったから。
ですがそんな私は、裏切りの対象である篠槙さんの逝去に深い悲しみを覚えてしまった。
それはつまり、ゴルグ=ラインソールの意志とは違う「新たな意志」が自分の中に生み出されたことを意味するのです。
自らの意志を持つということは、他人の意志に素直に従うことがなくなったということ。
そしてその新たな意志は……レジスタンスの皆さんの「味方」でありたい。そう叫んでいるのです。
(……でも、私は……お義父さんの……)
しかし私は葛藤します。
傀儡として存在していた意志なき私は、私の中で完全に消えてしまったわけではないのです。
サブスタンティアティの一員として、皆さんを裏切り続ける私。
レジスタンスの一員として、皆さんに歩み寄りたい私。
(私は……私は……っ!!)
私は布団の中で二つの意志のせめぎ合いに、静かに苦しんでいました。
結局、眠りにつけたのはそこから更に数時間経った後でした。
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