イルレコ─Encounter with [astronaut]

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「耐えきれた以上はこのまま攻撃すれば、普通は勝てるはずだ。だが……」 見事耐え抜いた状況に慧は若干興奮気味だったが、すぐに昂る気持ちを抑え込み、状況を見直し始めた。 隆侍も黙りながら、対戦相手の盤面の一部分に注目していた。 一枚、不明なカードが送り込まれている超次元ゾーンだ。 星河はまるでその視線に気付いたかのように説明を始めた。 『そちらの方が想像している通り、こちらもこちらで対策しています。《星鳥ガルムナ》はスター・ウォーカー能力で敗北を無効にし、さらに相手クリーチャーの攻撃も制限します』 「敗北阻止効果か……」 「しかも超次元ゾーンとなると、除去も無理だな……」 星河の説明と共に、超次元ゾーンのウインドウを開いて効果の詳細を確認した隆侍と慧は、その強力な防御能力に戦慄した。 星鳥ガルムナ 無色/8マナ/コズミック・ストーク/8000 スターウォーカー:このクリーチャーをバトルゾーンに出す時、かわりに超次元ゾーンに置く。そこにある間、このクリーチャーはSW能力を得、次の自分のターンの終わりにこのクリーチャーを破壊する。 SW-自分はゲームに負けず、相手は勝てない。また、相手のクリーチャーは攻撃できない。 (《ガルムナ》を突破する方法は二つ。一つはスター・ウォーカーが切れるまで耐えきる方法。もう一つは超次元ゾーンに干渉して除去をする方法だ) 星河は心の中で二つの可能性を示唆した。 後者は既存カードでは不可能な行動なのだが、対戦している隆侍のデッキはオリジナルのデッキ。 過去、安心しきっていたところでシューデルという男に《超新星ブラックホール・ディアボロス》の超次元ゾーン吸収能力を使われ突破してしまった経験がある星河は、警戒を怠らなかった。 「ならまずは《ルナ・サテライト》を無償召喚し、続けて2マナで二体目の《サテライト》も召喚する」 三度《Q.E.D.》のノーコスト効果を活用し、たった2マナで2体のコスト軽減を並べる隆侍。 これで4マナ残したまま、サイバー・ムーンは4コストも軽減されることになる。 「そして4コスト軽減し、3マナで《スカイタワー・リプル》を《大尖塔ブルーダイナソー》に進化する。月マナ武装によって次の俺のターンの始めまで、相手クリーチャーは全て攻撃とブロックできなくなる」 『なるほど。耐えることで《ガルムナ》を乗り越える方法ですね』 《ルナ・ブルーダイナソー》が初めに見せてくれた未来の姿、《大尖塔ブルーダイナソー》。 これで《ギガ・ポラリス》と《メガ・ポラリス》、《エルクリーナ》は次のターンのトドメには参加できなくなった。 星河は自分が考えた《ガルムナ》突破方法の内、次のターンを耐えるという後者であったことに多少の気は緩んだが、その中でも厄介な能力が使われたと思った。 盤上のクリーチャーを全除去したり、《予言者マリエル》のような常在型の攻撃抑制能力を出すだけならまだしも、トリガー型の攻撃抑制能力となれば厄介だ。 《大尖塔ブルーダイナソー》を除去したとしても攻撃可能にはならないからだ。 単騎であることで適用される能力が多い星河のデッキでは面倒な状況なのだ。
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