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「……途切れちゃったか」
今や珍しい砂嵐が流れるのみとなってしまったモニターを眺めながら星河は呟いた。
一方でツバメの方はちょっとむくれた様子で文句を言い始めた。
「ちょっと星河。あんた何で最後、手を抜いたのよ」
「ん、ああ……アレね」
言われて星河の対戦相手のラストアタックのシーンを思い出す。
《ブライトホーク》が攻撃不能ラインであった19000を突破し、ダイレクトアタックを行う時。
『《アルニラム》の3ドローで《グラティア》を引かれてなければ……!』
対戦相手側の同席者がそんなことを口にしていたわけだが……。
その時、星河の手には――
「きっちり《グラティア》を引けたんだから、使わない手はなかったじゃない。なんでしなかったのよ」
そう、星河は《グラティア》を手札に引き込めていたのだ。
つまり本来なら《ブライトホーク》の攻撃は届かなかったということになる。
しかし星河はそれを発動しなかった為に、勝負はあちら側の勝ちとなってしまった。
ツバメはそれが気に食わなかったようだ。
そんな彼女に対し、星河は何食わぬ表情のまま説明を始めた。
「理由は二つある。一つはノイズが強くなり始めていたから、あれ以上通信が続かないであろうと考えたから」
星河が《アルニラム》を召喚した辺りから、通信が不安定になり始めており、星河はこの通信が遠からず途切れてしまうことを予感していた。
ここで対戦を長引かせても、通信途絶による対戦中断という結果になってしまうのは望ましくない、というのが一つ目の理由だと言う。
「……もう一つは?」
理解はしたが納得はできないと言った不満顔のまま、ツバメは残る理由を尋ねた。
それに対して星河は、ふっと天井を見上げながら喋り始めた。
「どうやら彼らは、これから大きな敵と闘う感じなのだと読み取れたからね。この勝利が少しでも彼らへのエールになればと思ってね」
対戦相手だったルナブルの言動を聞き、星河は彼らがまだ闘いの真っ最中であると判断した。
対してこちらはサブスタンシャルコーポレーションとの闘いを終えた身。
オリカデッキ同士という稀有な対戦カードの勝利は、彼らを鼓舞する結果になるのではと星河は判断したのだ。
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