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二つの理由を聞き終えたツバメは一つ大きな嘆息をした。
「……ちょっと納得がいかない感じもあるけど、まあその気遣いできるところがあんたの良いところだものね」
仕方なし、という表情だったが、すぐにそれを笑顔に変えて、ツバメは口角を上げて言った。
「アタシはそんな星河が好きなんだもの!」
「はは、そりゃどうも」
相変わらずツバメの直球な愛情表現に、星河は愛想笑いで受け流すしかなかった。
「で、その機械どうすんの? 直るのかしら」
星河の反応は読めていたツバメは気にすることなく、視線を機械へと向ける。
先ほどまで砂嵐が表示されていたモニター部分は既に暗黒を映すのみとなっていた。
「流石に本人以外には無理だろうね」
修理には多少の心得がある星河だが、その機械の蓋は開けずともそう結論付けた。
何しろこれを作り上げたのは、タイムマシンすら開発に成功した天才といっても過言ではない人物なのだ。
自分にとっては仕組みも何も理解できないブラックボックスであることは容易に想像できた。
「じゃあ粗大ごみで捨てる?」
「……いや、この部屋に置いておくよ」
恐らく置物にしかならない存在となってしまった機械だが、星河は部屋に置いておく選択を選んだ。
何故ならそれは言うまでもなく、これが彼にとって自分の父親にあたる人物が遺した形見にあたる他ない。
しかしそれとは別に、彼には分らないことがあった。
(ハラマさんは……彼との邂逅も想定していたのか? いや、まさかな……)
ハラマが敢えてこの機械の鍵としてイリーガルメディアを設定したのか。
無論、それが星河に使わせる為であれば、何の為に、何に活用して欲しかったのか。
その答えは見つからなかった。
(まあいいさ。とても面白い出会いを得ることができたんだから)
星河は深く考えることをやめた。
理由はともかく、得た結果はとても面白いものだったからだ。
(とにかく頑張れ――ルナブルさん)
そして彼は、これから大きな闘いを迎えるであろう、声しか知らぬ戦友へエールを送るのだった――。
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