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その日は素直に寝坊してしまいました。
眠りにつけたのが日が昇る直前だったので仕方のないことですが……。
「おふぁようございます……」
寝不足で重い目蓋を擦りながら、むくりと上体を起こす。
既に皆さんは居間に移動しているらしく、誰も残ってはいませんでした。
ですがまだ布団を出る気にはなれず、ぼーっとしながら肉体の覚醒を待っていました。
「あ、エリーナちゃん。おはよう」
すると部屋に、いつもの修道服を着ている歓菜さんが入ってきました。
どうやら様子を確認しに来たようです。
まだ寝起き状態なので私はペコリと一礼するだけに留めました。
「朝ごはん、出来てるからね」
歓菜さんは手短に用件を伝えましたが、居間に戻ることなく私の隣に腰を下ろしました。
そして静かに呟いたんです。
「……昨日は、何も言ってあげられなくてごめんね」
昨日?
ようやく回転数が上がってきた頭は、篠槙さんが生きていると熱弁した件なのだと理解できました。
「ユリアースさんやノルさんの言うことが最もだって思っちゃったから、すぐに賛同できなかったの。でもね、可能性を捨てちゃダメだと思うんだ」
腿の上に載せた私の手に、歓菜さんは自分の手を重ねました。
「信じよう、私たちだけでも。篠槙君は……きっと生きてる!」
「歓菜さん……」
彼女の強い励ましの言葉を受けた私は、頬に熱いものが流れるのを感じました。
ああ……自分に気持ちを人に認めてもらうのは、こんなにも嬉しいものだったのですね。
「はい……! ありがとうございます、歓菜さんっ」
重ねてくれていた手を握り、私は歓菜さんに強く感謝の言葉を口にしました。
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