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モニターが指し示す道は右側の通路。
ですが私は左側の通路へと進み始めました。
「お、おい、エリーナ!?」
「私は私の役割を! 篠槙さん、私は貴方を信じています。ですから私のことを信じてください!」
戸惑う篠槙さんを残し、私は左側の通路を駆け進み始めました。
ごめんなさい篠槙さん。
私にはやらなければならないことがあるんです。
**
「ククク……いいぞ、我が傀儡よ」
ゴルグ=ラインソールは最奥の部屋の玉座で、篠槙羚とエリーナ=ラインソールが分かれ道にてそれぞれに道を進み始める様を眺め、笑い始めていた。
ゴルグはその流れを知っていた──いや、作り上げたと言った方が正しい。
エリーナがここで別の道を進むのは、ゴルグ自身が出した指示だからだ。
本来ならFSPにより全員を倒れさせ、まずは篠槙羚のみを起こさせて自分の元に進ませ、しばらく経過した後に次はエリーナだけを起こさせ、今の道を行かせる予定だったのだ。
エリーナが向かう先にはFSPから逃れさせた30名ほどの戦闘員が待機しており、ゴルグが勝とうが負けようが、その戦闘員が──いや、その戦闘員たちに仕込んだ新たなシステム『復讐の聖戦』がレジスタンス全員の息の根を止める。
それこそがゴルグの最後の切り札なのだ。
自らが死ぬかどうかはさして重要ではない。目的さえ達成すれば良いと、彼は狂っていた。
「最後に勝つのは我らサブスタンティアティなのだ、フハハハハハ!!」
最奥の部屋をゴルグの笑い声が響き渡るのだった。
**
「ハァ……ハァ……着きました……。ここ、ですね……」
エリーナは目的の部屋の前に辿り着き、荒くなりすぎた呼吸を必死に整えた。
そして扉に備え付けられた生体認証装置に手を置く。
ゴルグの指令を受けている為、当然認証は通り扉が開いた。
「「「エリーナ様、お待ちしておりました」」」
中には30名ほどの戦闘員が私を出迎えてきました。
私は気を引き締め、彼らの声に応えます。
「ご苦労様です」
「エリーナ様、此方のデュエルデバイスをお受け取りください」
するとリーダー格と思われる戦闘員の一人が私にデュエルデバイスを手渡してきました。
通常の銀色とは異なり、漆黒に染められたデュエルデバイスだ。
「いえ、私には自前の物がありますが……」
「このデュエルデバイスには『復讐の聖戦』が導入されております。我らの新たな力です」
それを聞き、エリーナにも思い当たることがあった。
レルードゥの部下より羚が『闇のゲーム』の死の呪いを防いだ旨を聞いたらしいゴルグが、『闇のゲーム』とは異なるシステムの構築をしていると、数日前に聞かされたばかりだ。
それが『復讐の聖戦』ということなのだろう、とエリーナは考え至った。
「わかりました」
エリーナは黒のデュエルデバイスを受け取り、自らの腕にセットした。
『復讐の聖戦』によりレジスタンス一同を殲滅させる。
それがゴルグ=ラインソールの意志なら──。
「始めましょう。私たちの最後の戦いを」
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