NDB─彼女に待つ未来

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** 「……は…………?」 私が事実を伝えると、想定していなかった事態にゴルグが血相を変えるのが、ありありと分かりました。 「隠し部屋に待機させていた『復讐の聖戦(ヴェンデッタ・ゲーム)』を携えた30人の部隊は全滅させました」 「なっ!? ば、馬鹿なっ!!? どうして貴殿が!!」 声を荒げるゴルグの姿を見て、私は心が晴れるような思いになりました。 「何故だエリーナッ! 吾は部隊を解放させ、レジスタンス共を殲滅させよと指示したはずだ!」 「ええ、分かっていますよ。ですから部隊そのものを無力化させたのです」 私は持っていた黒のデュエルデバイスをゴルグの方に投げ捨てます。 もっとも既に起動できないように破壊していますが。 勿論、首謀者であったゴルグにその意味は伝わったようです。 「まさか……『復讐の聖戦(ヴェンデッタ・ゲーム)』によって全員殺したというのか……っ!?」 「『復讐の聖戦(ヴェンデッタ・ゲーム)』では敗者が死ぬことは『闇のゲーム』と同じなようですが、勝者にも別の呪いが発生するシステムでしたね。しかし味方陣営──つまりサブスタンティアティ側は勝者の呪いの影響を受けないようにシステムが構築されていました」 勝てたとしても呪いによってデッキとの絆を絶たれ、運命力をリセットさせてしまう呪い。 二度目のデュエマで確実に倒す為のシステム、それが『復讐の聖戦(ヴェンデッタ・ゲーム)』の本質であり、その特徴を『Next Duel Burst』と言うみたいです。 無論、自分たちも同じ呪いを受けてしまえばむざむざ戦力を減らすことになる。 故にサブスタンティアティのメンバーは呪いから除外されるようにしたのです。 もっとも敗者の死の呪いは『闇のゲーム』をベースにしているからか無理だったようですが。 「私はサブスタンティアティの一員、呪いの影響を受けません。ですから私が全員を相手する必要があったのです」 「エリーナ……そんな危険なことを」 私の説明に篠槙さんの方が驚きを呟いていました。 心配されることは分かっていました。だから教えなかったのです。 「何故そんなことを……」 「分からないのですか、ゴルグ。答えは簡単ですよ」 未だに困惑し続けているゴルグ。 いや、何となく気付いていても信じたくなかったのでしょうか。 そんな彼に私は名を告げました。 「私はエリーナ、 エリーナ=シャリテですっ!!」 「シャリテ……だと……っ!?。貴殿、まさか記憶が……っ!!?」 「貴方が雑な『ハザード』の使い方をしてくれたお陰です。記憶の封印は完璧ではなかったんですよ」 記憶管理装置『ハザード』により、ゴルグに攫われるまでの記憶を封印された私ですが、過去に関わるものをきっかけに思い出せる程度の封印強度だったのです。 もっとも思い出す際は、頭に激痛が走ってしまい、非常に辛かったです。 痛みの強さは思い出す記憶の量に比例するようで、ハラマさんから両親のことを教えてもらい、一気に思い出した時は気絶してしまう程でしたしね。 ですが今ではその痛みすらも愛おしい。 「私」ではなかった私が、「私」を取り戻した証でもありますから。 「だ、だが、記憶を取り戻しただけでは……っ」 「始めから間違っていたんですよ。私は自我カテクシス欠乏症ではなかった。非常に微弱でしたが、私に自我はあったのです」 「ば、馬鹿な…………」 かつての自らの計画が覆ってしまっている真実を告げられていくゴルグは、顔面がどんどん蒼白化していきました。 そんな彼に私は最後の言葉を高らかに突き付けました。 「ゴルグ=ラインソール! 貴方の――いえ、貴方『たち』の野望は終わりですっ!!」 「馬鹿なあああああああああああああああああああっ!!!!!」 全てが頓挫してしまったことを悟ったゴルグは、断末魔の方に大声で吠えたのでした。
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