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僕は首筋に感じる鋭い痛みと全身に広がる甘い痺れに耐えきれず、思わず膝を折った。倒れるかと思ったが、男の細い腕が僕にしっかりと巻き付いて体を支えてくれる。 見かけによらず力が強いな。 噛まれているにも関わらず妙な事に感心しながら、僕は怖いくらい大きな月をぼんやりと目に映していた。 どれくらい経ったのだろう。随分長く感じたけれど実際はほんの数十秒だったかもしれない。 血を吸うのに満足したのか首から口を外した男が僕を再び見つめた。 月の光のせいか目が赤く見える。 ━━まるで吸血鬼みたいだ。柊先生の書いた吸血鬼も確か目が赤かった。 僕がそんな事を思っていると、目の前の男が口を開いた。 「本物の血って、まずっ!」 えっ、散々飲んでおいてそれはないんじゃ……。 僕は混乱する頭を抱えたまま、意識を手放した。
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