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「お待たせ!どう、お父さん、亘…お母さんの形見の浴衣」
「お前もやっとお母さんの浴衣が着れる様になったんだな、いやぁ…驚いた、まるで若い頃のかーさんそっくりだ、やっぱ伊織は母さんに似たな」
「やべー可愛いっすね、伊織」
「更に惚れたか?自慢の娘に」
「からかわないで下さいよ恥ずかしいじゃないですか?」
実際本当に似合ってる、おばさんの若い頃は知らないけど確かに顔はおばさんに似て居る…てか、おじさんエライ美人さんと結婚したんだな…びっくりだ。
伊織のお父さんに行き先を告げると、さっそく2人で花火会場へと繰り出した、人混みに飲まれない様俺たちは手をしっかり繋いで歩く、やがて会場付近に来ると更に人混みが増えた、すし詰めと言う訳ではないが橋の所で何とかポジションを取った俺はその懐に伊織を納めて手すりに手をつき揉みくちゃにならない様にする、やがて花火が上がる前になると人混みは止まり、俺にも少し余裕が出来た。
場内放送が流れ、大会のオープニングセレモニーが打ち上げられた花火と共に始まる、俺たちはその変幻自在に変化する花火に一喜一憂しながら盛り上がり夢中で見ていた1時間
「歩きながらでも見えそうだからあっち行こうよ亘」
「喉でも乾いたか?」
「それもあるけど、縁日の先に神社があるでしょ?あそこまで登ろうよ」
確かに縁日で並ぶテキ屋のその先に少し階段がある上に鳥居らしきものが見える。
「なんて神社だろう?」
「んっ?あの神社は縁結びの神社だよ、カップルでお参りしたら願いが叶うって噂」
「そーゆー事か…よし!行こうぜ」
2人で手を繋ぎ階段を上がり鳥居を抜けた先の境内で2人並んで参拝する、周囲には街灯がありそれなりには明るいが、良く見ればそこかしこにカップル達が集い何を話して居るのか見つめ合いながら語り合っている。
「カップルだらけだな…ここ」
「こんな場所だもん、仕方ないよ1組1組が自分達の未来予測図を語り合いそれに向けて進んでく、私と亘もそんな中の1組…まぁ、彼等ほど楽な道のりではないけどその分幸せになれる気がするよ」
カップルばかりに気を取られていた亘がふとその先の海に目が行った、そこは見晴らしの良い開けた場所でベンチもあり、満天の星空が広がっていた。
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