想い人

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「 ただいまぁ。」 「 ミャーン 」 家族の中で誰よりも帰りを待ちわびてくれるのは、 いつも飼い猫の 「 ミーちゃん 」だった。 白黒のハチワレ猫だ。 「 おおっ。。。ただいま。ミーちゃん。」 学校から帰ると、玄関で始まる戦いがある。 「 ふふふっ。」 「 やるか!」 ベルトに長い紐のついたネズミのぬいぐるみをつけて、 廊下を駆け回り、 ミーが獲物を捕まえるまで、 ひたすら駆け回る。 そう、ただひたすら・・・。 単純だけど、とことん遊んでやる・・・。 「 ああっ!やられた!」 「 8分40秒・・・。」 始めたころは、1分もかからなかったのに、 いつの間にか、ミーの歳を感じてしまう。 猫の寿命は10年と言われていたが、 今は良質なペットフードや身近な動物病院もあり、 平均寿命は、15~16年程と言われている。 ミーは家に来てもう15年になるらしい。 俺が3才の頃だ。 「 ミャー、ゴロゴロ。」 「 おーっ。楽しかったか。」 「 ミーちゃん。こうやって毎日運動してると、 きっと長生き出来るぞ。 ギネスの新記録に挑戦しような。 38年なんだぞ。まだまだ半分もきてないからな。」 人間に換算すると170歳近くになるらしい。 「 おかえり。」 「 あんたまたやってたの。」 「 ああぁ、もう。額も倒しちゃって。」 「 あーっ、ごめん。」 「 母さん、その額なに?」 「 これ、綺麗でしょ。 押入れの整理していたら出てきたのよ。 おじいちゃんの形見なのよ。」 正方形の額の中には、 着物生地なのか、純白の生地に 花鳥山水が見事に染め上げられていた。 「 なんか、良くわからないけど、 凄いのはわかる。」 「 大切なものだから、 もう落とさないでよ。」 「 ああ、わかった。」 「 京友禅か、 小説のネタになるかなぁ。」 「 ニャー、ゴロゴロ 」 「 おおっ、ヨシ! 2階に上がろうなぁ。」 ミーは2階にある匠の部屋が一番のお気に入りだった。
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