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書くことが思いつかなかったから、
ネットで調べた京友禅について、
適当に書いただけの小説だった。
「 一つの作品を仕上げるのに、
幾つもの職人の手を渡り、
機械では表現できない、
職人の気持ちがこもった作品。」
そう、僕が書いた小説は、
単なるイメージでしかなかった。
「 職人たちは、凛とした眼差しで胸を張り
真っすぐに歩きだした・・・ 」
こう僕が書き上げたページには、
猛烈な批判コメントがあった・・・
「 馬鹿野郎!
一枚一枚職人の手により染められる型友禅は、
型紙一枚で一色を染めはる。
平均でも50枚近くの型紙を小刀で丹精込めて彫り上げる
着物の柄によっては百枚以上だ!」
「 凛として胸を張る?」
「 ふざけるな!
本物の型友禅職人は、
1日、何時間、何十時間も、
技を使い仕上げてゆかはる。
猫背になって当然やんかぁ!」
「 胸を張り真っすぐに歩く? 」
「 京友禅の染め作業は、
着物一反10mを超える長さを、
横に歩かはる!
一日中、カニ歩きしはる! 」
「 何なんだ?これ?」
「 善作って、誰だよ?」
クラスメイトの悪戯かな。
そう思いながら、
小説の続きにコメントのクレームを書いた。
「 誰ですか?
素人の小説に、
わざわざ本気で口出ししないでください!
気分が悪いです!!
もう、辞めてください。」
「 あっ!」
再び、匠の作品にコメントが書かれた。
「 馬鹿野郎!
おまはんが!わしを呼びはったんやろ!」
「 何だよ、訳わからない?」
嫌になった匠は、明日先生に相談する為、
続きを書くのを辞めた。
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