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「 先生、あの、俺の作品なんだけど。
悪戯のコメントが多くて、困ってる。」
「 ええっ。 ちょっと待てよ。
えーっと、うん?」
「 お前寝ぼけてるのか?」
「 コメント1つも無いぞ。」
「 しっかりしろよ。」
「 慌てて自分のスマホで、ログインしたが、
閲覧数も1のまま、コメントは0だった。」
「 おかしいな?」
不思議な出来事に困惑しながらも、
どうしようもなかった。
教室に入ると、琴は俺と目を合わせようとしない。
2人の間には、気まずい空気が流れていた。
「 おいおい。何で朝からそんなイチャイチャしてるんだ。」
授業が始まると、哲弥が俺に問いかけた。
後を振り返ると、
蓮と琴が、隣同士の机をひっつけて授業を受けている。
「 ああっ。」
見たくも無いものを見てしまった気分だ。
俺たちの視線に気がついたのか、
蓮は聞こえるように、呟いた。
「 ゴメンネ。琴ちゃん。」
「 俺、教科書忘れちゃって。ほんと、ごめん。」
社会の教科書を真ん中に置きながら、
二人で目を通している。
「 はぁ。」
最近ため息ばかりだ。
長い一日が終わり、
ようやく下校の時間だ。
「 琴ちゃん。明日10時に駅前でね。」
「 うん。わかった。」
明日のデートの約束の待ち合わせのようだ。
「 楽しそうに2人は、教室を出て行った。」
「 はぁ・・・ 」
「 あっ!ガシャーン 」
動揺したのか、金属の筆箱を落としてしまった。
転がるシャーペンを拾い上げ、
丁度視線が蓮の机の中を向いた。
「 ・・・・・・ 」
「 あっ。社会の教科書・・・。」
蓮は忘れていなかった。
卑怯な奴だと思った。
でも、
好きな女性と近づきたい男なら・・・。
本当に好きなら、
あたりまえの事なのかもしれない。
だって、
どんな手を使っても、
側にいたいと思うのは当然だから・・・。
俺の、本気度は、
あいつに負けてるのか・・・。
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