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「 ただいま。」
「 ミャーン 」
「 おおっ。今日もやるかぁ!」
ドタバタ。。。
ガシャン。。。
「 わぁ!ヤバイ!」
先日、母親に怒鳴られたばかりの額をまた落としてしまった。
しかも、今度は面倒な事に、
額がバラけてしまっている。
幸いガラスじゃなく、アクリルの透明板だったから割れずに
組み立てなおせそうだった。
とても柔かい生地に、見事な染め上がりが見えた。
「 すごいな。 」
一枚一枚の型を彫って、
これ染めたのかな。
多彩な彩色され、驚くほど綺麗な仕上がり。
寸分の狂いも無く、塗り重ねられている技術は、
目を見張るものがあった。
「 じいちゃんって、凄かったんだな。」
取り合えず、落としたことバレない様に、
元通り、額に収めようとした時、
生地の裏に書かれた文字に気がついた。
型枠を置く目印の様な黄色い四角い染め跡の裏側に、
「 善作 」と言う名が書かれていた。
「 ・・・・・・ 」
「 善作・・・。」
「 えっ。」
「 まさか・・・。」
ガチャ。
「 ただいま。」
母親が買物から帰宅してきた。
「 あっ。母さんこれ。」
「 あんた、またやったの!」
「 あぁ。ごめん。
それより、この善作って?」
「 あぁ、お爺ちゃんの名前だよ。」
「 そうなんだ。」
「 どうかしたの?」
「 いや。なんでもない。」
「 ハイハイ。ミーちゃん横通してよ。」
善作は・・・
死んだ爺ちゃんだった・・・。
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