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秘密
「 チュン チュン 」
東の窓から差し込む日差しで、
目が覚めた。
気が付くと、パソコンのキーボードを枕に
眠ってしまったようだ。
「 痛てててぇ。 」
頬には、くっきりとキーボードの跡が残っている。
「 うわぁ、凸凹してる。直るかな。」
昨夜は、善作爺ちゃんとのやり取りを
待つ間、記憶を無くした様だ。
再びログインしてみた、
「 あっ。」
匠の作品の更新がされていた。
1ページだけ、
たった、一行だけ、
「 21時 駅側 扇公園 緑ベンチ 傘持参!」
愛想無く書かれていた。
「 これって、今日なのか?」
「 緑ベンチって、噴水前かな?」
最寄駅のすぐ側に、扇公園と呼ばれる公園がある。
公園にある池が上から見ると、扇型をしているらしく、
見方によっては、虹が広がるイメージもあり、
別名虹公園。
その中央には綺麗な噴水があり、
噴水が上がる時、虹が現れる人気のデートスポットだ。
「 確かその噴水の周りを囲むように、
色のついたベンチが7つ、
赤 橙 黄 緑 青 藍 紫 虹の色のベンチがあった筈だ。」
「 爺ちゃん、今夜、
俺、そこに行けばいいのか? 」
小説に入力したが、
やはり、返事は無かった。
「 ブーブー 」
匠の携帯バイブが鳴った。
「 もしもし。 」
「 うん。わかった。」
哲弥からの連絡だった。
日曜日だが、美術課題の粘土作品に遅れのある者は、
教室を開放してくれる様で、
一緒にやらないかの誘いだった。
「 他人のデート気にしながら一日過ごすより、
気がまぎれるので、引き受ける事にした。」
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