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「 シュウウーーーッ。」
「 ザバーーーン。」
20時を知らせる噴水のライトアップと演出が始まっていた。
「 あと一時間か。」
噴水の周りのベンチはカップルで一杯だ。
行き場を無くして立ちつくしていると、
小さな移動販売車に目がいった。
「 Power Stone 」そう書かれた黒板が立てかけられていた。
パワーストーンか。
確か、誕生石とか、誕生守護石とかあるんだよな。
カップルだらけの噴水の前で、
傘持って、不審者と思われて通報されても面倒だから、
時間つぶしで、少し見てみる事にした。
「 いらっしゃい。」
車の荷台には、色とりどりの
鮮やかな石が並べられていた。
「 お客さん、初めてだね。」
首には沢山のパワーストーンをぶら下げた
おじさんなのか? 若いのか?
年齢不詳だが、何故か人を引き付ける雰囲気の
店員に声を掛けられた。
「 はい。」
「 石の魅力に惹かれると、
皆さん何度も足を運んでくれるんだよ。」
「 お兄さんも、きっとそうなる様な石に巡りあえるよ。
ゆっくり、見ていってね。」
「 はい。」
パワーストーンは高価なものだと思っていたが、
価格はどれも500円前後で、
手頃な物ばかりだった。
「 誕生石 」
そう書かれたPOPには、
12ヶ月の石の名前と、
効果の様な事が書かれている。
琴は確か、3月産れだったから・・・。
「 あった! 」
「 アクアマリン・・・。
幸せな結婚に導く・・・。」
匠は迷わず、この石を1つ手に取り、
彼女の幸せを願う想いを込めて
パワーストーンを買った。
もしかしたら、
パートナーは僕じゃないかもしれない・・・。
でも、
僕は、何も出来なくても・・・
彼女の幸せを心から願う事は出来るんだ。
きっと、彼女は幸せになれる。
きっと・・・。
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