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琴との時間は、あっという間に過ぎてしまった。
異性とのショッピングは普段と違い、
見るもの全てが、新鮮に感じてしまう程、
充実した時間だった。
デートの前に、
彼女と2つの約束を交わしていた。
1つ目の約束は、
琴に関する小説投稿を辞めること。
そして、
2つ目は、
彼女には門限があり、
午後9時には駅で別れる約束を交わしていた。
「 日本のシンデレラは、
ガードがかたくて、口説きにくいよ。」
「 ふふっ。
送りオオカミさんに、変わる前に
赤ずきんちゃんは逃げるんだよ。 」
駅から、彼女の自宅へ向かう
扇公園の入り口付近で
携帯のアラーム音が鳴った。
「 ピーーーピピィ、ピーーーピピィ 」
「 タイムアップ!」か・・・。
「 蓮くん、
ちゃんとアラームしてくれてたんだ。」
意外にも、蓮の誠意ある対応に、
琴の表情がとても嬉しそうだった。
「 今日は、素敵な一日だった。」
「 私も、楽しかった。
蓮くん、ありがとう。」
「 約束は守らなきゃね。
じゃ。明日また、学校で・・・。」
蓮はそう告げ、
右手を差し出し握手を交わし、
二人は別々の方向へと
歩き出した。
「 琴! 」
不意に呼ばれた声に、
そっと振り返ると、
そこには大きな体が・・・。
細く長い指先が伸び、
腕を掴まれた感触を感じた瞬間、
琴の体は、大きな胸の中へ引き寄せられ、
抱きしめられていた。
「 蓮くん・・・ 」
「 ダメだよ・・・。」
「 ・・・・・・ 」
「 もう少しだけ、
こうしていたいんだ。」
「 ・・・・・・ 」
「 蓮くん・・・。
まだ、いい匂いするね。」
琴は優しく、
抱きしめる手を解こうとした時、
蓮は口づけを求めてきた・・・。
目を閉じた腕の中から、
微かに小刻みに震える感触を察した蓮は、
静かに瞼を開け目にしたものは・・・
小さな瞳に涙をためていた、琴の姿だった。
「 ごめんね。蓮くん・・・。」
「 謝らないでよ。
余計に辛くなる・・・。」
「 子猫ちゃんはまだ、
ファーストキスもしてないようだね。」
「 いつか、
その唇・・・。
奪って見せるからね。
琴お嬢様。」
蓮は琴のオデコに、
軽くキスをし、
優しくハニカミながら、
別れを告げ姿を消した。
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