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再び噴水の周囲が騒がしくなり、
「 シュウウーーーッ。」
「 ザバーーーン。」
21時を知らせる噴水のライトアップと演出が始まっていた。
「 ゴロッ ゴロゴロ 」
遠くの空から、雷の響く音が聞こえた。
パワーストーンの販売車は、
何かを察したかの様に、店じまいを始めだした。
「 お兄さんゴメンネ。
ひと雨来るかもだから、
もう帰るね。」
「 あんたも、早く・・・。」
「 それ、傘? 」
「 凄いねあんた!
もう、石の効果出てんのかな、なんてね。」
「 ありがとう。また、寄ってよ。」
そう告げると、車は走り出した。
噴水の周りにいたカップル達も、
夜空の急変に気が付き、
慌ただしく駅へと歩き始めだした。
「 ポツッ、ポツッ 」
傘を差すまでもないが、
足元には薄っすらと、地面を濡らす雨粒が見え始めた。
やがて、周囲の人たちは、
駅に向かう速度をあげていた。
その人混みの中、
逆行してこちらへ向かってくる一つの影が見えた。
公園を抜けて、住宅街へ行くのだろう。
その影は、雨粒が大きくなるのを察し、
次第に早足で、こちらへと近づいてきた。
「 あっ!」
「 ああっ!」
薄暗闇の中、
噴水のライトアップが、
互いの顔を照らしだし思わず声がでたのだ。
「 琴・・・。」
「 匠、何してんのこんな所で、」
「 あれぇ。
まさか、カップルの覗きなんてしてないでしょうね。
趣味悪いわよ。」
「 してないよ!」
「 えっ・・・。
ゴメン、怒った?」
「 匠、もしかして、
待っててくれたの? 」
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