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契約
清々しい朝、
昨夜は何事も無かったかの様に、
匠と琴は通学路を、並んで歩いていた。
「 あれ、岬かな? 」
向かうべき学校とは、逆方向に急ぎ足で駆け寄る姿が見えた。
「 あっ、岬!おはよう。
忘れ物でもしたの?」
「 忘れ物じゃないわよ! 」
「 何、怒ってんのよ? 」
「 あんたは、相変わらず情報に鈍いんだから!
蓮くん、あの蓮くんがさ、有名なモデルだったんだよ!」
「 うん。知ってるよ。」
「 そうじゃなくて、大変な事になってるの。
琴このまま正門から学校に入ると、
危ないから、知らせに来たんだよ!」
岬の慌てた早口言葉の半分は理解するものの、
残り半分は、言っている意味がわからなかった。
「 とにかく、グラウンドの野球部の部室のある裏口から入ろう。」
「 岬、訳分かんないよ。」
「 もー、これ見てよ!」
岬が差しだした週刊誌の特集記事には、
「 カリスマモデル REEEN 熱愛発覚!」
と題され、
昨日のパンケーキを仲良く食べている写真と
扇公園で琴を抱きしめる蓮の姿が映っていた。
琴の目元には、黒塗りがされているものの、
同級生が見れば一目でわかる写真だった。
「 今朝、お父さんが通勤電車で週刊誌読んでたらね。
岬の友達じゃないかぁ?って、連絡があって・・・。
もう、ビックリだよ。」
「 ネットでも、炎上してるみたい。」
「 で、訳わかんないけど、
学校の入り口にすっごいマスコミとか、
ファンの女の子が来てて、蓮くんと琴の事探してるみたい。」
「 そんなぁ・・・。」
「 匠も何ボケっとしてんのよ、
早く裏口から学校入ろう。」
野球部の朝練習のノック音が響く中、
部室の裏側にある小さなフェンスの扉を見つけた。
「 鍵掛って入れないんじゃない?」
その時、一人の男が扉へ近づく姿が見えた。
「 担任の九条先生だ。」
「 おおっ。グッドタイミングだったな。」
「 岬と九条先生は打ち合わせしていた様だ。」
「 先生すみません。ご迷惑おかけして・・・。」
「 ああっ。全くだ。」
「 でも、なんかワクワクするな。はっはっは。。。」
意外にも先生は楽しそうだった。
「 片桐蓮は校長室で待ってる。
お前たちも、一緒に来て欲しい。」
九条先生の指示に従い、校長室へと向かった。
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