10人が本棚に入れています
本棚に追加
校長先生は、柔やかな表情で話し始めた。
「 実はね。片桐蓮君のお母様は、
当高校の卒業生でしてね。
私が教壇に立っていた頃の、
教え子なんだよ。」
「 そんな繋がりがあったんですか。」
「 3ヶ月前に、カナダのお母様から連絡があってね。
息子さんを日本の高校へ通わせたいとの話だった。」
「 初めは大した事じゃないと、
安易に考えていたんだが、
芸能活動をされていると聞いた時には驚いたよ。」
「 うちは芸能課が有るわけでもないし、
他の生徒と分けて、
特別扱いするわけにはいかないし、
しかも、詳しく調べれば
トップモデルらしいじゃないか。」
「 そんな折、マネージャーの深海さんが
来られ、彼の現実離れした日常生活の中、
一度しかない学年時代を、
普通の学生達と同等に、
短期間でもいいので、
送らせてあげたい、
仲間や、恋愛、部活動など、
10代の青春時代しか感じる事が出来ない事を
これから先を見据え、学ばせ
経験させてあげたいとの申し出で、
教育者として、共感した次第なんだ。」
「 深海さんの話では、
ファン層はモデル雑誌対象の
20代以降が多いため、
高校生の間では、騒ぎも起こらないと
思っていたのだが、
読みが甘かったようだ。」
「 彼と交わした契約なんだが、
この様な事態を想定して、
特定の異性との交際又は、
そう判断せざるを得ない行動、
それと、飲酒、喫煙、暴力行為発覚時は、
即、退学の約束を交わした
条件付き転学だった。」
「 そんな・・・。
蓮くん、一言いってくれれば。」
「 私のせいで・・・。」
「 違うよ、琴ちゃん」
「 俺が決めたんだ。
そうなってもいい位、
そう想える程、
琴ちゃん魅力的に感じた。」
「 だから、後悔してないよ。」
最初のコメントを投稿しよう!