契約

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校長先生は、柔やかな表情で話し始めた。 「 実はね。片桐蓮君のお母様は、 当高校の卒業生でしてね。 私が教壇に立っていた頃の、 教え子なんだよ。」 「 そんな繋がりがあったんですか。」 「 3ヶ月前に、カナダのお母様から連絡があってね。 息子さんを日本の高校へ通わせたいとの話だった。」 「 初めは大した事じゃないと、 安易に考えていたんだが、 芸能活動をされていると聞いた時には驚いたよ。」 「 うちは芸能課が有るわけでもないし、 他の生徒と分けて、 特別扱いするわけにはいかないし、 しかも、詳しく調べれば トップモデルらしいじゃないか。」 「 そんな折、マネージャーの深海さんが 来られ、彼の現実離れした日常生活の中、 一度しかない学年時代を、 普通の学生達と同等に、 短期間でもいいので、 送らせてあげたい、 仲間や、恋愛、部活動など、 10代の青春時代しか感じる事が出来ない事を これから先を見据え、学ばせ 経験させてあげたいとの申し出で、 教育者として、共感した次第なんだ。」 「 深海さんの話では、 ファン層はモデル雑誌対象の 20代以降が多いため、 高校生の間では、騒ぎも起こらないと 思っていたのだが、 読みが甘かったようだ。」 「 彼と交わした契約なんだが、 この様な事態を想定して、 特定の異性との交際又は、 そう判断せざるを得ない行動、 それと、飲酒、喫煙、暴力行為発覚時は、 即、退学の約束を交わした 条件付き転学だった。」 「 そんな・・・。 蓮くん、一言いってくれれば。」 「 私のせいで・・・。」 「 違うよ、琴ちゃん」 「 俺が決めたんだ。 そうなってもいい位、 そう想える程、 琴ちゃん魅力的に感じた。」 「 だから、後悔してないよ。」
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