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警備員が営業マン。
大手ならあり得ない話かもしれないが、小さな会社では、自らがきっかけ作りをしておかないと次に繋がらない。
「良太君、明後日なんだけどさ、(指名)が被っちゃったんだよね」
三橋さんが申し訳なさそうな顔で俺を見る。
「またですか!まったく――それでロングなんですか?ショートなんですか?」
「ショート二本だけど、移動時間を考えたらロングになるかな」
「勘弁してくださいよ」
〈指名〉
ホストのようだが、警備員にも指名がある。
毎回違う警備員よりも同じ警備員の方が、安心できるし、話も通じる。あとは、オーナー以外の意見も少なからず影響している場合もある。
毎回、同じ警備員=次回の契約
困るのは、三橋さんは相手が指名しなくても「前回の若い警備員でいいでしょうか」と俺をあてがう。
たいがいのクライアントは「任せます」「それがいいね」と納得してしまうわけで、俺の仕事は増える一方。
だからこそ、スポット契約だけの警備会社で生活できるわけだが、被るのは正直辛い。
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