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「暑い――もう、死にそうだ」
事務所のドアを開ければ、涼しいクーラーの風が迎えてくれる――と、期待するのは俺の願望。
実際はオンボロクーラーが(これ以上は無理だよ)と中途半端な風を出しているのが現状である。
「良太君、ご苦労様。で、(次の契約は)どうだった?」
汗だくの俺に社長の三橋さんが声をかける。
「二ヶ月後の週末、土日に今日と同じ時間にだそうです」
「おっ、さすがは良太君。契約取るのが上手いね」
三橋さんは嬉しそうな表情を浮かべながら、さっそく予定表に書き込む。
「三橋さん、三回目だから、日給上げてくださいよ」
「わかってるよ。五百円増しね」
三橋さんは右手を広げながら答える。
「たったの五百円?せめて、千円でしょう」
「それは難しいな。だってクライアントから貰う金額は同じだろ。うちも経営厳しいんだからさ。良太君が金額交渉してくれば、アップしてあげるけど」
「俺は(ただの)警備員です。営業マンじゃないですよ」
「今の時代は警備員も営業マンなの。スポット契約は、警備員の良し悪しが次回の契約に繋がるからね」
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