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大手警備会社と違い、俺がいる小さな警備会社は長期の契約を取るのが難しい。
経営が成り立っているのは〈スポット契約〉をこまめに取っているからだ。
スポット契約とは、新装開店や特売日など1日・2日だけ駐車場の警備を頼むクライアントのことである。
〔小回りのきく警備会社〕
〔若手が機敏に安全警備〕
〔大手より格安警備会社〕
など、その場その場でキャッチコピーを変えながら三橋さんは営業をこなしている。
「良太君、明日はレストラン山の海に朝9時から、宜しくね」
「山の海って、ここからバイクで一時間以上ですよ。勘弁してくださいよ」
「だってさ、若い女の子向けのレストランなんだって。だからさ」
「三橋さん、うちの警備員は若くてイケメンとか言ったんでしょう?」
「ビンゴ!勘がいいね。そんなわけで、宜しくね」
警備員が若くなくても警備に関係ないと思うのだが、実際は定年前後の警備員を嫌がるクライアントは特に夏場は多い。
一つ目は熱中症で倒れられても困るから。
二つ目は機敏に動いてくれないから。
夏場になると、年配の人は堪えるのか決められた場所ではなく、日陰に逃げている時がある。
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