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ドアノブが回った。
あれだけ何をやっても石のように固まっていたドアが、
少し力を込めただけで、あっさりと開いてしまった。
その時の僕の喜び様は、半狂乱と言っていいものだった。
8年ぶりに足を踏み入れた自宅の廊下、立て掛けられた掃除機、壁に貼られたポスター、
何もかも懐かしくて、感動的だった。
その足で、母が待っているはずのリビングに向かった時だった。
リビングの閉じられたドアに、今まさに手をかけようとしている、姉の姿があったのだ。
無表情のままピタリと静止している、その姿、その顔を見た瞬間に、
8年間溜まりに溜まっていた涙が溢れ出した。
願わくば活き活きと動いていて欲しかったが、
それでも「自分以外の誰かがそこに居る」というだけの事が、
こんなにも有り難い事だとは思わなかった。
僕はしばらく「姉さん」と掠れた声で呼びかけながら、
小さな頃、怖い夢を見た後に慰めてもらった時のように、
しばらくの間、すがりついて泣き腫らしていた。
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