0人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の知る常識の範囲内では、起こり得るはずのない事だが、受け入れるしかなかった。
どうやら僕以外、いや「僕の部屋の内側にあるもの以外」の、
全ての時間が静止してしまっているようだった。
そう判断した理由は、部屋の外の様子とは裏腹に、
部屋の中にあった、壁掛け時計の針がちゃんと動いていたからだ。
時刻は深夜2時を示していたが、外の様子はずっと変わらず、夕暮れのままだった。
それから、半ば放心状態となった僕は、窓の外のジョギング男と、
部屋の時計を交互に眺めていた。
こんな訳の分からない、世界のフリーズのような現象は、
ちょっと待てばすぐ直るはず、そんな淡い希望を抱いていたからだ。
されどジョギング男は、今にも動き出しそうな姿勢のまま、一向に動き出さなかった。
時計の短針は「7」を二度通過していた。
僕が母に晩御飯に呼ばれてから、24時間が経過していたのだ。
そうしてまた気付いた事があった。
24時間もただぼんやりとしていただけにも関わらず、
自分は喉が渇いていない。晩御飯前だったのに、腹も減っていない。
トイレで用を足したいとも思わない。眠いとすら感じない。
胸に手を当ててみれば、心臓の鼓動すら感じられない。
静止しているのは部屋の外側だけでなく、僕の生命活動も含まれていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!