8月109531日

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僕の知る常識の範囲内では、起こり得るはずのない事だが、受け入れるしかなかった。 どうやら僕以外、いや「僕の部屋の内側にあるもの以外」の、 全ての時間が静止してしまっているようだった。 そう判断した理由は、部屋の外の様子とは裏腹に、 部屋の中にあった、壁掛け時計の針がちゃんと動いていたからだ。 時刻は深夜2時を示していたが、外の様子はずっと変わらず、夕暮れのままだった。 それから、半ば放心状態となった僕は、窓の外のジョギング男と、 部屋の時計を交互に眺めていた。 こんな訳の分からない、世界のフリーズのような現象は、 ちょっと待てばすぐ直るはず、そんな淡い希望を抱いていたからだ。 されどジョギング男は、今にも動き出しそうな姿勢のまま、一向に動き出さなかった。 時計の短針は「7」を二度通過していた。 僕が母に晩御飯に呼ばれてから、24時間が経過していたのだ。 そうしてまた気付いた事があった。 24時間もただぼんやりとしていただけにも関わらず、 自分は喉が渇いていない。晩御飯前だったのに、腹も減っていない。 トイレで用を足したいとも思わない。眠いとすら感じない。 胸に手を当ててみれば、心臓の鼓動すら感じられない。 静止しているのは部屋の外側だけでなく、僕の生命活動も含まれていたのだ。
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