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 康平は一斗缶らしき物を、木の棒で叩きながら、おれの名を大声で呼んでいた。  頭が朦朧とする。  一斗缶と棒を地面に落とし、気がついた俺の肩を揺する。 「逃げるぞ! しっかりしろ! 」 尚も朦朧とする俺に、ばちんっ、と康平のきつい一発。 「痛ってえぇ!」バッチリ目が覚めた。  開けっぱなしの口から垂れたよだれを拭い、「康平! 慶太は! ......大丈夫なのか?!」 「入り口で待たせてる。ちょっと様子が変なんだ、早く行こう」  俺達はサイリウムの明かりを頼りに洞窟の入り口へと急いだ。  入り口に慶太を見つけ、駆け寄る。  「慶太! 大丈夫か?!」  「あんまり大丈夫じゃねぇ......」片目を押さえながら振り向く。  「左目が見えねぇ......」「うわっ」と声が自然にでてしまった。  慶太の左目、黒目の部分が白く濁り、白目のところが薄く赤みを帯びている。  「全然見えないのか?」  「いや、すりガラス越しに見てる感じだな」   「......悪い......俺のせいで」  「馬鹿言え、誰のせいでもねえ......お前も、あれ、見たんだろ......」  あの儀式の様なやつのことだろう。  「......ああ......見た」  「だったら、お前も油断できねぇだろ、さっさと山を下りちまおうぜ」  言うと同時に歩きだす、片目しか使えない慶太をふたりで補助しながら山を下った為、来たときより大幅に時間を喰ったが、日が落ちる前に麓に付けた。
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