6人が本棚に入れています
本棚に追加
康平は一斗缶らしき物を、木の棒で叩きながら、おれの名を大声で呼んでいた。
頭が朦朧とする。
一斗缶と棒を地面に落とし、気がついた俺の肩を揺する。
「逃げるぞ! しっかりしろ! 」
尚も朦朧とする俺に、ばちんっ、と康平のきつい一発。
「痛ってえぇ!」バッチリ目が覚めた。
開けっぱなしの口から垂れたよだれを拭い、「康平! 慶太は! ......大丈夫なのか?!」
「入り口で待たせてる。ちょっと様子が変なんだ、早く行こう」
俺達はサイリウムの明かりを頼りに洞窟の入り口へと急いだ。
入り口に慶太を見つけ、駆け寄る。
「慶太! 大丈夫か?!」
「あんまり大丈夫じゃねぇ......」片目を押さえながら振り向く。
「左目が見えねぇ......」「うわっ」と声が自然にでてしまった。
慶太の左目、黒目の部分が白く濁り、白目のところが薄く赤みを帯びている。
「全然見えないのか?」
「いや、すりガラス越しに見てる感じだな」
「......悪い......俺のせいで」
「馬鹿言え、誰のせいでもねえ......お前も、あれ、見たんだろ......」
あの儀式の様なやつのことだろう。
「......ああ......見た」
「だったら、お前も油断できねぇだろ、さっさと山を下りちまおうぜ」
言うと同時に歩きだす、片目しか使えない慶太をふたりで補助しながら山を下った為、来たときより大幅に時間を喰ったが、日が落ちる前に麓に付けた。
最初のコメントを投稿しよう!