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 家に着くと、早々に押し入れからリュックを取り出す、中にキャンプ用のランタン型ライト、着替え、ポテトチップスを突っ込み、母親に遅くなるかもと一言声をかけて家を出た。  麓へは十五分前に着いたが、すでにふたりとも来ていた。 『緋目山』  俺達が幼い頃から大人達に、この山には近付くなと言われてきた山。  山に近付いた同級生が骨折したとか、地元の高校生がキャンプして、数日後に事故に遭ったとか、偶然としか言えない様な話も幾つか聞かされ脅された。  だけど俺達は別に怖くて緋目に近付かなかった訳ではない、大人達がうるさいのが嫌だったのと、単純に興味がなかっただけだ。  此処にある山は何も緋目だけじゃない、ハイキングができるゆるい山はあるし、自転車を少し漕げば本格的な登山が楽しめる山もある。 だから、何も緋目山にこだわる必要はなかったのだ。
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