1.群衆は異端の入り口に触れる

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パーカーの下は当然、制服だ。 マコトが襟のスカーフを取り、ボタンを外す。裾をめくろうとしたところで、宇津木がころりと床に体を倒した。 「おい」 これだと脱がせられない、とマコトが不満を漏らすと、宇津木は寝転んだまま自分の手でぐいぐいとセーラー服を脱いだ。 「脱皮みてぇ」 マコトが言うと、宇津木は可笑しそうに笑った。 脱いだセーラー服が頭でひっかかっるのを手伝ってやる。白い布地の裏側には点々と血が滲んでいた。 「おとなしくしてろよ」 マコトはスカートまでは脱がさず、セーラー服の上だけを持って脱衣所まで行き、籠にそれを入れた。 清潔なタオルを水に濡らして絞る。 電気を点けなかった脱衣場の、鏡に映った自分の顔をマコトは見た。 薄暗く見えづらいが、あまり顔色はよくないのはわかった。 静かな部屋で、滴がぽたぽたと垂れる音がやけに耳につく。 居間に戻ると、宇津木がパーカーを羽織ろうとしていた。 「バカ、まだだ」 マコトが咎めると宇津木は渋々といった様子でパーカーを再び脱いだ。 大きな目をすがめて睨み付けてくるその様子は、学校でマコトに蹴られて震えていた姿とはまるで別人のようだ。 「拭くぞ」 声には苛立ちが混ざったが、しかし手つきは臆病者のように丁寧だ。 宇津木の肌には傷が無数にできていた。固まった痂皮(かひ)や、黒くなった痣もある。今日の1日だけで出来たものではないことは、マコトが一番わかっている。 粗方拭き終わると、タオルを広げて腫れた右肩に巻いた。 「…つめたい」 「我慢しろ、このくらい」 濡れたタオルの水分が染みるのは気にしないのか、宇津木はパーカーを羽織った。 そして、ジッパーは開けたまま、あぐらをかいて座っているマコトの膝に足を開いて乗り上げる。 頭を抱えられ、レースのついた下着に包まれた乳房にマコトの頬がピタリとくっつく。 先程まで見ていたので、今さらそんなものをみたって、どうとも思わない。 マコトはパーカーの裾から手を入れ、宇津木の背中を撫ぜた。 下着のサイドベルトの下をなぞるように指で手繰ると、宇津木が腕の力を強くした。 ホックの金属をカリカリと爪で弾く。もどかしいのか、もぞもぞと宇津木が体をよじらせる。 「マコトくん」 呟く宇津木の息は、甘ったるく上がっていた。
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