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「そこ、いつの間に席替えをした」
担任の言葉に、緊張感がクラス内に走ったようだった。
倫理を受け持つ、30代前半くらいと思われる教師。宮尾(みやお)秀正(ひでまさ)、とマコトにフルネームがわかるのは、彼が社員証のように律儀にネームプレートを首からさげているからだ。
宮尾はマコトと宇津木のいるところまでツカツカとやってきた。
金髪頭の不良とパーカーという校則違反コンビに、冷たい、蔑むような視線を向けている。
目の下に濃いクマをつけているその教師にマコトは、思ったよりもこの人は若いかもしれない、とそんな感想をぼんやりと抱いた。
「乙守と、うつき」
宮尾が口にしたそのとき、フードの下、彼女がビクリとした。
マコトは宮尾の革靴を蹴る。
「……何のつもりだ」
宮尾がマコトを睨む。
「うつぎ、です」
「は?」
「濁点。人の名前間違えてんじゃねぇよ、センセ」
からかうようにマコトは言う。
宮尾は少しだけ目を大きくした。
「名簿にはフリガナもある。間違いはないはずだ」
「俺が決めたんなら、そうなんだよ」
「…話にならん」
そう切り捨て、宮尾は「さっさと席を戻せ」と宇津木まで視界に入れて言った。
「俺は目が悪りぃんだよ。代わってくれたんだ」
なぁ、うつぎ。
マコトの言葉に、宇津木は怯えたように何度も首を縦にふった。
その様子に宮尾は諦めたように息をつき、「明日には元に戻しておけ」とマコトの机を拳でコツコツと叩いた。
「お前の服も、だ」
宮尾は宇津木にもそう言い、彼らに背を向けて教壇へと戻っていった。
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