1.群衆は異端の入り口に触れる

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「どけ。入れねぇだろ」 上から降ってきた声に、彼女はずりずりと座ったまま移動する。 宇津木が退のいたので、マコトは自宅のドアを開けた。 まず鞄を放り込み、両手があくと、外廊下でうずくまる宇津木のフードの耳を引っ張った。 「ほら」 短く命令すると、宇津木は両手をマコトに向かって伸ばした。 「…ん」 前から抱えてやる。 宇津木の首筋は湿っていて、子供の匂いがした。 夕方の春の部屋は薄暗く、すこし蒸れている。 マコトは宇津木を居間に下ろすと、服の上から確かめるように彼女の体を触った。 細く、無駄な脂肪など全くなさそうなのに、どこもかしこも宇津木は柔らかい。 右肩に触れると、ヒュッ、と息を飲む音がした。 「ここか。脱がすぞ」 マコトはそう断りをいれ、宇津木のパーカーのジッパーを下げた。 身じろぎをして嫌そうに眉をひそめるものの、宇津木は抵抗はしなかった。 パーカーの袖から腕を抜き、フードも取る。 小さな頭の短い髪にマコトが指を差し込むと、そこはしっとりと湿っていた。
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