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ノックの音がした。
ソファーに腰を下ろし雑誌を読んでいた私は、壁のモニターに目をやった。モニターに映った男たちは、どこにでもいそうなくたびれた中年に見せかけているが、隠しようのない鋭い目つきが彼らの職業を明確に示していた。
ついに私のところにもおいでなすったか。私はグラスに揺れるバーボンを一気に飲み干すと立ちあがった。
ドアを開けると、男たちはすかさず室内に足を踏み入れた。
「島田さんですね。任意ですが、あることで事情をお伺いしたいのですが、署まで御同行願いますでしょうか」
タフガイで通っている私だが、今夜はちょいと体調が優れない。アルコールも入っている。一人で五人を相手するのは少々面倒だ。まして、相手は偽善Gメンである。偽善がもっとも重罪とされる現代において偽善者摘発専門に組織された偽善Gメンの捜査員は屈強な肉体を備えたエリートであり、彼らに抵抗しようとする無謀な馬鹿者は、体調のいいときの私だけだろう。
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