南海の碧ヶ島にて

2/6
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
 東京都に属しているとは言え ほとんどの都民がその場所 いや 地名さえ知らないであろう 小笠原諸島の遥か南 碧ヶ島(みどりがしま) 面積としては 帝都ドーム 二十個分にも足らぬ 大して 広くもないこの島 かつて 米軍の施設が置かれていたが 日本に返還されて後も 誰からも 顧みられることが なかったこの 南海の孤島 碧ヶ島  名前の通り 緑が多く まさにジャングルと化してる この島に 一棟の研究施設が 建っています 「常盤木植物研究所」と書かれた 門柱にも なんの植物かわからないが 蔓が這い回っていて 全ての文字を読むのも 一苦労の有り様 ここには 植物に関する研究の第一人者 常盤木 耕太郎(ときわぎ こうたろう)教授と 研究員たちが 住み込みで 何やら研究を続けています 常盤木博士は 自然に植物の繁茂する力を 上手く 食糧へと利用できないかと 東京にある 虹の都大学で教鞭をとりながら 研究をすすめていたが  ついに 第一段階の研究を終えて ここで 次の実験へと 突入しているところだそうだが。。。。。。。 と言う 情報が 私 ルポライター 樹 広司 (いつき こうじ)のもとに 届いた。 私が 記事を いろいろと寄稿している 帝都日報社の飯ノ木 稔(はんのき みのる)デスクから 鶴の一声が 「碧ヶ島へ行って スクープを取ってきてくれ」と命令された わけで  「この暑い最中 南海の孤島になんか行きたくない」と一言断れればよいのだが  いやいや このデスクには 逆らえず「これは一種のパワハラじゃねえ」なんて思うも これも言えぬまま 小笠原行きの連絡船の出港するアタミへと 今 東海道線で向かっているわけで
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!