南海の碧ヶ島にて

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アタミにて 連絡船に乗り 小笠原諸島 母島までこれで 行き そこから 碧ヶ島へは 船をチャーターして行くしか方法がないのだが 今回 常盤木研究所へ 取材の連絡を 入れたところ たまたま 母島まで  所員二人が 買い出し 研究資料の引き取りに来るというので それに 同船させてもらえることとなり 船のチャーター料が 行きは助かったのだが。 母島までは これも父島で乗り換えなければ 行けず ほぼ一日以上かかることになるのだ それはそれと ゆっくり船旅を満喫なんて 貧乏ライターには許されず この船旅も 帝都旅行社の船旅記事を書くと言う もうひとつの仕事 そして それとは別口の これまた 違う風俗記事を纏めねばならず いやはや 船旅を楽しむ余裕なぞあるわけもなく。 一昼夜 過ぎて 父島へ 着き その後 今度は母島行きの船へ乗り継いで 二時間あまり。 なんか ヘロヘロになりながら やっと  母島へ到着したのは 夕方遅く 日が沈み出した頃でした。 民宿に予約を入れてあったので  すぐに荷物を預けて 近くの居酒屋へ 夕食を取りに向かい そこで 研究所の二人とたまたま 出会ったわけで 「ああ 私 帝都日報の記者 樹 広司と申します この度は どうもありがとうございます」 と 若き男性所員(眼鏡をかけたやせ形で、温和そう) 杵築春夫氏と 若き女性所員(短髪の小柄、きつそうな感じ。笑。) 水野 秋子女史に 名詞を渡しながら 話しかければ 杵築氏「いやあ うちらの研究が帝都日報さんで扱ってもらえるなんて すごかねえ」と横の 水野女史に同意を求め 「しかし まだ 第一実験も終了してないのに いいんですか そちらは?」と訊いてくる始末 「いやいや あの研究 うちのデスクが必ず成功すると息巻いてまして。」
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