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「あ…貴方様は、豪商のみやっつぁん様…!」
「今夜、空いているか」
「は、はいもちろん!!!
お、おいタカコ、お客様をマサのところへお連れしろっ!」
「?…はぁい」
嫌々返事をしながら、みやっつぁんとやらをお連れしようとすると、
じっと彼の視線が私に注がれているのを感じた。
(?変な客…。さっさとマサ姐さんのところへ連れていこっと)
「お客さーん、こちらですどうぞ~」
タカコは総じてやる気のない態度でみやっつぁんを案内する。
(はあ、とっとと送り届けてスマホいじりながら寝ずの番しよっと)
そう。
禿の仕事の一つは、先輩花魁の一夜を衝立の向こうで聞くこと。
客が無茶な要求をしていないか、遊女と脱走を企てていないか等を見張る為だ。
「…おい」
「なんですかぁ?」
「お主のようにやる気のない娘は初めて見た」
「そうですかぁ」
「面白い」
みやっつぁんはぼそりと呟いた。
(はあ?変な客…)
この時のタカコには知る由もなかった。
このチンケな客が、タカコの運命を変えることになるなどとはーーー
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