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「あ……ありがとうございます……」
答えに窮した私は、それだけ言って俯いた。
「ただ、恋愛感情かって訊かれると違うかもね」
金井さんは、いたずらっ子のような笑みを見せた。
「やっぱり、からかってる!もう帰ります!」
「あ、ちょっと!」
慌てる金井さんを置き去りにして、私は腰を上げて、振り返りもせずにその場を離れた。
なぜか、涙が溢れてきた。
その日も夫は遅く、時計の針が日付を越えてから一時間が過ぎたところで、一人、眠りに就いた。
翌日もその翌日も、私は公園には立ち寄らなかった。
きっと、彼は今日もあのベンチにいるだろう。
二回目はまだいい。でも三回目は。
彼に会いたいと思っていると、はっきり意思表示をするようなものだ。
会いたい。私は彼に会いたいのだろうか。
かわいいと言ってもらえたから?かっこいいから?私はフルフルと首を振り、夕食用の野菜を切りながら一人呟いた。
「私には夫がいるの」
自分にそう言い聞かせながらも、なぜか心がざわめく。
金井さんの笑顔が脳裏に浮かんだ。
「ジョギングの途中で休憩場所にいる顔見知り……会うくらいならいいのかな……」
明日は立ち寄ってみよう。
私は、なんとなくそう決めていた。
翌日。
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