1人が本棚に入れています
本棚に追加
いつものように午前中の家事を終え、ジョギング用のランニングTシャツに着替え、ナイロンパーカーを着た。
毎日のことなのに、何となく心が弾んでいる。同時に抱く微かな不安感。
軽く準備運動をして、ざわめく気持ちを紛らわせた。
ジョギングを始めたのは、結婚して、ここに引越して来てから。
仕事を辞めて家庭に入り、なんとなく持て余した時間を埋める目的だった。
もちろん、体型の維持、健康の増進も兼ねて。
最初はあまり走れなかった。
今は毎日十キロくらい走っている。
あの公園に着く頃には軽く汗ばんでいる。
帰ってからのシャワーが楽しみだった。
今日は少しペースが速い。
折り返して少しくらいで、少し息があがった。
あの公園は八キロ地点くらいの場所にある。
私は息を切らせながら、公園へと入って行った。
木洩れ日が射す緑濃い小径を小走りに駆け抜ける。
木々に囲まれたあの場所。
自動販売機が近くに置かれたベンチ。
そこに、彼はいた。
ノートパソコンを膝に乗せて、考え事をしながらキーを叩いている。
その姿を見たとき、なぜか涙が溢れた。
慌てて拭って笑顔を作る。
深呼吸して、ゆっくりと近づいた。
「こんにちは」
声をかけると、金井さんは少しびっくりしたようにこちらを見上げて、ノートパソコンをパタンと閉じた。
「やあ」
最初のコメントを投稿しよう!