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IT関連の仕事なのだろうか。こんな場所で仕事なんて、羨ましい気もする。
上品で優しそうな顔立ち。知性的な瞳を眺めていると引き込まれそうになる。
ついつい、凝視してしまっていた私の視線に気がついて、彼がこちらに顔を向けた。
「あ、打鍵音、うるさい?」
「あっいえっ……その……凄いなーって思って。私、パソコンとか苦手だから!」
慌てて言うと、ああ、それかと言うように彼が笑った。
「俺はこれが仕事だからね。ライターなんだ」
「ライター?」
私の頭の中にはタバコの火を点ける着火道具のライターが思い浮かんだ。でもそんな訳ないし、イントネーションも違うから、たぶん違う。わかっていない私に、彼は苦笑した。
「えっと、日本語で言えば記者。商品の宣伝記事を書いてるんだ」
「へ、へえ……」
肯いて見せたが、いまいち理解できなかった。
友だちにもよく笑われるくらいに私は、機械に弱くて理解力も低い。
未だに私がわかっていないことを察した彼は、腰を浮かせて私のすぐ隣に近づいて座り直した。
「こんな感じ」
膝の上のノートパソコンの画面を指差した。そこには化粧品の新商品が載っていた。
「こんな感じで、商品の紹介をするんだ」
私の顔のすぐ隣で、彼が言った。
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