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左近が訊ねると、一年生全員が手を挙げたので、彼は部室のロッカーからティーポットやカップを取り出した。
紅茶が出来上がると、それぞれ好きな菓子を選んで、談笑が始まる。時折直哉もそれに混じりつつ、放課後の穏やかな一時が過ぎていく。
文芸部はその名の通り、文芸作品を創作する部活動である。が、初めの数十分はこうして皆がリラックスして談笑に耽る時間になる。別にそうすることが決まっているわけではないが、芙美達一年生が部室に菓子を持ち込み、直哉がそれを黙認するうちにその流れができてしまった。
初めはいい顔をしなかった左近であるが、一年可愛さもあり、次第に彼もその談笑に混ざるようになった。
今では後輩と接するいい機会と捉えているらしい。
「さて、そろそろ作業に移れよ。文化祭まで一か月しかないんだからな。製本まで考えると、時間もないぞ」
談笑に耽る部員達に直哉が声を掛ける。それをきっかけにしたように、部員達はそれぞれ持参したパソコンを開き、執筆を始めた。
彼らは文化祭に向けて、各々一つの作品を書いている。最終的に彼らが書いた作品は一冊の本にまとめられ、文芸部全集と題されて一般公開されることになっていた。
文化祭まで一か月。彼らはそれぞれ最後のスパートに入っていた。
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