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どこかで見たことがある文章だ、と思って読んでみれば、何てことはない。直哉の書いていた小説と非常に似ているのだ。文体や構成、キャラの設定なんかも直哉がかつて書いていたものに近いものがあった。芙美もあの小説投稿サイトの利用者らしく、直哉の作品を読んでいたらしいのだ。
その直哉の作品は更新が止まって久しい。
パソコンの電源を入れ、自分のアカウントページにアクセスする。そして、休載中の表示が出ている作品の更新画面を開いた。真っ白なエディタが拡がり、カーソルが明滅する。最初の一行を打ち込む。
「……」
しかし、途中で指が動かなくなり、その指はバックスペースキーを押した。打ち込まれた文字が消えていく。
「やっぱ……無理か……」
そう呟いて、直哉は無造作にノートパソコンを閉じた。外はとっくに日が暮れていた。パソコンの明かりがなくなった暗闇に、長い溜息が消えていった。
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