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「いたっ! 殴った! 保護者を殴ったよ、この子!」
払われた方の手の甲を擦りながら、地蔵は反抗的な目を芙美に向けた。しかし、芙美はそんなこと意にも介さずパソコンを睨み続ける。呆れた地蔵は小さく溜息を吐いて、その画面を覗き込んだ。
画面の中には、何かの入力フォームが開いており、芙美はそこに何やら文章を打ち込んでいた。その速さたるや、目にも留まらぬ早業である。が、地蔵に彼女が何をしているのかわかるはずもなく、彼女の手元を見て、はあ、だの、ほう、だの声を漏らしているだけだった。
「何をしておるのだ……。選定はやめて、字書きにでもなるつもりかの?」
「その選定のためにやっているの。これを見て」
「んん? 汐海……一? 誰だ、こいつは? 次はこいつにするのか?」
「そのつもり……なんだけど……」
「けど、なんだ?」
芙美は眉尻を下げ、画面の隅を指差した。そこには、彼の書いた作品が最後に更新された年月日が記されていた。
「二年前じゃないか。こりゃ、もう書かねえな、こいつ」
「そ、そんなことない! 今は、その、事情があって書けないだけだよ」
「その事情とやらはいつになったら片付くかねえ……。ん? お前、その画面の後ろの奴は何だ?」
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